こんにちは。さんさ好みのまなぶです。
突然ですが今回は気まぐれに「盛岡さんさ踊りの笛」について書いてみようかと思います。
なぜ書こうと思ったかですが、「1.ネット上での情報が少ないこと」「2.演奏できれば楽しい!」の2つが主な理由です。
それでは参りましょう!
盛岡さんさ踊りで使用する笛の種類
盛岡さんさ踊りで使う笛は「篠笛」と言って、篠竹から作られています。
毎年8月に開催されるパレードでよく踊られている「二番・七夕崩し(たなばたくずし)」「三番・栄夜差踊り(えやさおどり)」「四番・福呼踊り(ふっこおどり)」で使う笛は、『三本調子・古典調・七穴(七孔)』です。
篠笛の菅頭に漢数字が書かれていて、「三」と書かれているものは三本調子という意味です。
これが仮に「四」と書かれていれば四本調子ということですね。ちなみに伝統さんさ踊りでは四本調子を使う団体もあります。
篠笛の種類は一本調子から十二本調子まであります。数字が大きくなるほど笛の大きさは小さくなり、出る音は高くなります。
そして、指穴が7個のもので穴の大きさがほぼ均一のものを使います↑
指穴の大きさがほぼ均一のものは「古典調」です。
古典調とは別に「ドレミ調」の笛もあります。↑の画像を見て分かるように、指穴の大きさがバラバラですよね。これは十二音階の音を出すためにチューニングした結果です。
ポップスなどの曲を演奏する場合にドレミ調を使うようですが、盛岡さんさ踊りではドレミ調は使いません。
試しにドレミ調の篠笛で盛岡さんさ踊りのメロディを吹いてみたことがありますが、まともなメロディになりませんでした。盛岡さんさ踊りで笛をやりたいと思っている方は、必ず古典調の方を準備しましょう。
盛岡市内だと、黒澤楽器店さんや伊藤楽器さんなどが篠笛を扱っています。
古典調篠笛の音は1本1本異なる
盛岡さんさ踊りで使う古典調の篠笛は、1本1本音程・音質が異なります。
簡単に言うと、例えばAさんが使う三本調子篠笛と、Bさんが使う三本調子篠笛は、各々の音程も音質も微妙に異なるんですね。
音質の違いについては、例えば「Aの笛は柔らかい音が出る」「Bの笛は明るい音」「Cの笛は固い音」など音の表情が様々です。製作者によって音質の傾向が変わるように思います。
↑の画像の篠笛は全て三本調子・古典調のものです。よく見て頂けば分かると思いますが、1本1本長さも指穴の大きさ、唄口の形と大きさが異なります。色、焼き、塗りも違います。ゆえに笛ごとに音質や音程も異なるのです。
「1本1本ごとに笛の音程が違っていいの?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?でも問題ありません。祭り囃子の笛の世界では、何本もの笛の微妙に異なる音程で同時に演奏することで生み出される「揺らぎ」が良く、楽しめる部分とされているからです。
とはいえ、盛岡さんさ踊りのパレードで隣の笛吹きさんが自分の笛の音程とあまりに大きく異なっている場合は「ん~~、なんか不協和音みたいで苦しいっ!」と感じて、似た音程の笛を新しく購入される方もいるようです。
盛岡さんさ踊りの笛演奏の難易度
祭り囃子の世界では、「一・笛、二・鉦(かね)、三・太鼓」と言われるように、一般的には笛の難易度が一番高いと言われています。
盛岡さんさ踊りの笛難易度の現実はどうなっているのでしょうか?
指穴は七穴であっても実際に使うのは4つ(5つ)のみ
実は盛岡さんさ踊りの笛で実際に使う指穴は5つだけです。そして、動かす指は4つだけ。左手の薬指は穴を塞ぎっぱなしにします。
動かす指は4つだけですので、パレードで演奏する3つの踊りの指使いを習得することについては、実は割と簡単です。難しいのはもっと別のことなんですね。(後述します)
ちなみに、団体によっては7つ全ての指穴を利用する踊りもあります。例えばある伝統さんさ団体では囃子舞の時に三本調子の七穴全てを使って演奏します。僕も練習したことがありますが、七穴全てを使う演奏は難易度が飛躍的に上がります。
ですが盛岡さんさ踊りでは5つだけです。指使いでの心配は基本的に無用です。
篠笛は太くなるほど吹くのが難しい
篠笛は管が太くなるほど息を入れる量が多くなり、吹くことが難しくなるんですね。ですので篠笛では一般的に、初心者は六本調子~八本調子が吹きやすいようです。
ですが盛岡さんさ踊りで必要とされる篠笛は三本調子です。凄く難しいわけではないのですが、それでも最初の1か月はちょっと難しいです。太鼓みたいに叩けば音が誰でも出せる楽器ではないからです。
ちなみに、僕は所属団体の都合で三本調子と四本調子を持っていますが、三本調子を吹いた後に四本調子を吹くと「あ~・・息入れが楽だ~」と感じます。
調子数が小さくなるほど、その分吹くために体力も必要になるのですね。
初心者が笛でつまずく理由No1「音出し」
はい、ここからです!盛岡さんさ踊りの笛が一番難しい部分は「音出し」です。つまり、「ふーーーー~~~っ」と吹く部分です。
なぜ難しいか?単純に、吹いても最初は音が出ないからです。初心者の方の多くが挫折してしまう原因がこの「音出しが出来ないこと」なんです。
僕が最初に篠笛を手に取って吹いてみたとき、音はま~~~ったく出ませんでした。正直「えっ?!なにこれ?どうなってるの??」と思いました。
はい、篠笛で音を出すには、ちゃんとした吹き方があるんですね。簡単に言うと「コツ」です。
ここで、さんさ好みの笛奏者である内村さんの写真を解説で使っていきます。
口にご注目。おちょぼ口のようになっていますね。笛で音を出すためには、この口の形を作る必要があります。
そして、息を細くし、まっすぐ安定的に吹き続けるようになることと。そして、吹く息の半分は笛の唄口へ、半分は外に捨てるようにします。
盛岡さんさ踊りのパレード中は基本的に高音で吹くことが多いですが、その時の吹き出す息の速度は、低音を出す時の2倍の速度が必要です。
↑この文章を読んで「え???わけがわからない」と思われる方も多いのではないでしょうか(笑)
まぁ・・篠笛の吹き方を文章に書き起こすとこういう説明になってしまうんですね。
ですが実際には体で覚える方が早いので、笛に興味がある方はまず実際に手に取って吹いてみたほうが良いと思います。
初心者が笛を吹けるようになるためには?
では初心者の方が笛を吹けるようになるためにはどうすれば良いのでしょうか?
あくまでも僕の意見になりますが、ポイントは2つです。
- 吹ける人に習う
- 最低1か月は続けてみる
最初は吹ける人に習う必要があります。最低限、持ち方と唄口への口の当て方、息の当て方だけは教えてもらった方が良いです。
その後はもう根性と継続です。1日10分でもいいので1か月は毎日音出しの練習をしてみること。
最初は本当辛いです(笑)体に力だけ入って疲れるのに音はまともに出ない日々が続きます。それでも、毎日少しずつ続けていれば、音が出る瞬間があります。「あっ、こうかな?」と分かるようになってくればしめたもの。一度高い音が出せるようになったら、もう笛奏者への門は開かれたも同然です。あとは運指と息づかい等を練習していくのみ!
ちなみに僕は笛を吹き始めて1日20~30分くらい練習して2週間くらいで低い音比較的安定的に、1か月くらいで、高い音を出せるようになりました。これが出来るようになるまでは結構苦しかったです。息を吐き続ける練習なので頭もクラクラしました。
ですが、音を出すコツを一度掴んでしまえば、あとは指使いを覚えて身体に慣れさせるだけになります。
これから「盛岡さんさ踊りで笛を始めてみたい」という方であれば、1つの曲だけであれば2か月くらいしっかり練習すればパレードに出られるのでは、と思います。
さんさ好みのパレードでは3つの踊りを行いますので、最低でも3カ月ほぼ毎日練習する必要があるでしょう。
笛の略譜について
盛岡さんさ踊りで演奏される(通り太鼓・総合さんさ・七夕くずし・栄夜差踊り・福呼踊り)の略譜は、盛岡さんさ踊り公式ホームページでダウンロードできます。
横笛略譜のダウンロードURL:http://www.sansaodori.jp/pdf/hue.pdf
とはいえ、現状では殆どの団体がこの略譜通りの演奏をしていないので、メロディを覚えるのであれば一番新しい年のミスさんさ演舞の動画をyoutubeで探して、耳コピした方が早いと思います。
盛岡さんさ踊りの笛の魅力
最後は、僕が思う盛岡さんさ踊りの笛の魅力について書いていきます。
結論から言うと、「笛が吹けるようになればとても楽しいし、お得感満載」です。
笛の魅力その1:唯一のメロディパートである!
笛は盛岡さんさ踊りで唯一のメロディパートです。鉦も太鼓も基本的にはリズムパート(太鼓も突き詰めればメロディですが)なので、笛がしっかり吹けるということはパレードでは存在感が大きくなります。
加えて、盛岡さんさ踊りでは笛の吹き手が少ないんですね。例えばさんさ好みの場合、パレード時には総勢200人ほどになりますが、笛は全部で10人くらいです。
練習でも太鼓と踊りは必ず集まりますが、いつもの笛の人が今日はお休みでいない~~っ!メロディが無くて寂しい!笛の人誰か来ないかなー!という事があります。笛奏者はだいたい何処でも重宝されるんですね。
そして笛が上手に吹ければ、派遣演舞ではソロ演奏ができます!独奏者になれるんです。その分の責任は伴いますが、これが味わえるパートは笛のみです。笛が吹けるようになれば世界が広がります!
笛の魅力その2:何歳になっても出来る!
「何歳になっても笛ならできる!」これ素晴らしいと思います。
当団の内村氏のお話をしましょう。内村さんは盛岡さんさ踊りパレードの第1回目から現在までずっと太鼓で参加し続けてきた方なんですが、66才頃に腰を痛めてしまい、太鼓を続けることが難しくなってしまいました。さんさ太鼓の重量は5.3kgあり、膝を落として踊るので下半身にかなりの負担がかかるんですね。
ですが、故障後は笛奏者に転身。毎日練習しつづけて、今や安定感抜群の笛奏者として団で活動しています。
このように、笛の場合は踊りや太鼓よりも体の動作負担が小さい分、何歳でも始めやすく続けられやすい点が魅力だと思います。
ちなみに僕が笛を始めた理由も一時期体を怪我したからです。「どんな時でもさんさ踊りの活動に関わっていたい。笛も出来るようにしておこう」と思い、その時の体の状態で自分に出来る事をやってみようと思った結果です。(今はすっかり回復してまた太鼓に戻りました)
笛の魅力おまけ:なのに安く済むし軽い!(笑)
おまけの魅力。盛岡さんさ踊りで使う篠笛は太鼓に比べてかかるお金が圧倒的に安いんです。だいたい1万円前後くらいで、高くても2万円には収まります。
太鼓の場合は1つ8万円くらいします。太鼓の値段の問い合わせに返答したときに、その価格の高さに驚く人は少なくありません。
そして太鼓重いっ!笛は軽いっ!派遣演舞で長距離の移動時だと「踊りと笛の人達・・・軽くて羨ましいなぁ・・」と思うことがあります。軽さはある意味で魅力の一つになっていると思います。
余談:さんさ踊りの笛名人の演奏
最後にこれだけは知って頂きたいので余談として書かせて頂きます。
さんさ踊りの笛の世界ではいわゆる「名人級」の人もいます。その方たちの笛の音を実際に聞いて頂ければ分かると思うのですが、「凄い」という言葉だけでは足りません。
僕が言葉で表現するとしたら「力強く澄んだ音。かつ一点の曇りもなく、音が龍のように生きてうねりながら飛翔している様が永遠に続くよう」でしょうか。
音の出だしから装飾音の入れ方とタイミング、強弱、解決音まで何から何まで素晴らしく、さんさ踊りのクオリティを何段階も高くしているように感じます。
突き詰めて精進し続ければ、この名人達のように笛1つでも大きな力を発揮することができる。これもさんさ踊りの笛の魅力だと思います。
今回の内容がご参考頂ければ幸いです。
さんさ好み まなぶ
PS;さんさ踊りの練習方法や流れについて、大雑把ですが別ページで書いています。そちらも合わせてご参考頂ければ幸いです。
【関連ページ】「盛岡さんさ踊りの笛の練習方法と流れ」