さんさ好み まなぶです。今回はさんさ踊り手の宿命とも言うべき問題の「膝痛」と、そのケア方法について書いてみます。
今回の情報は、私自身の調査・経験や専門家によるアドバイスと、私がお世話になっている「Conditioning Field BLUE8」に所属するトレーナー(某理学療法学科専任教員)から教えて頂いたものです。
また、このブログには膝ケアの方法も書いていますが、専門家の指導のもと私自身に合ったものになります。万人に効果があるとは限りません。あくまで参考として読んで頂ければ幸いです。実施される際は医師や専門家に相談したうえお願いします。
それでは参りましょう!
多くのさんさ踊り手の悩み「膝痛」
さんさ踊りは左足が軸足になる踊りが多く、足腰を落としてひねりや跳躍が多いことから、多くの踊り手が膝痛に悩まされます。
私が所属している団体メンバーや通年で練習している伝統さんさの踊り手さんに、「膝は痛みますか?」と聞くとだいたい半分くらいの人が「痛い」「曲げると痛い」「座ってるだけでも痛い」と言います。
太鼓パートの場合はさらに痛みやすい傾向です。約5kgの太鼓を胸に抱えて踊りとほぼ同じ動きをするので、膝への負荷が大きいのですね。
私の膝痛は、踊っている時はもちろんのこと、酷い時は階段の上り下りや寝ている時の足の角度によっても痛みが生じていました。この状態になると、思い切って踊る事が難しくなります。
30歳代までは気合で膝痛をカバー出来ている人が多いです。しかし40歳代以降になると膝痛が慢性的になる事が多く、踊る時間を減らしたり、痛み止めやヒアルロン酸を注射し始める踊り手もいるほどです。
さて、この膝痛の原因は何によるものでしょうか?
さんさ踊りの膝痛原因は主に2パターン
さんさ踊りの膝痛原因は主に2パターンのようです。
- パターン1:膝周辺の筋肉が固くなり筋肉のスムーズな連動ができなくなることによる組織損傷
- パターン2:膝軟骨の摩耗による変形性膝関節症
どのパターンかでケアの方法が変わります。私の膝を専門家にみてもらったところ、私の場合はパターン1の「膝周辺の筋肉に硬直」が原因になっている可能性が高いとのことでした。
パターン2に該当する場合だと、整形外科医による診断と治療が必要です。ヒアルロン酸注射などが必要になるケースもあるそうです。これに該当する私の周辺の踊り手さんは、さんさ歴20年以上の方が多い印象です。
特にパターン2の膝痛の方は、このブログに書かれているケア方法を自身だけの判断で行うと悪化させるリスクが伴います。必ず専門家に相談するようにしてください。
さんさ踊りで私に膝痛が起こるメカニズム
次は私の膝痛が起こっていたメカニズムについてです。まず最初に筋肉の特性を知っておきましょう。
筋肉というものは、もともと柔軟に伸びたり縮んだりできる組織です。そして、いろんな筋肉が上手に連動することで体がスムーズに動くようになっています。
しかし、さんさ踊りで左ひざ周辺の筋肉を収縮させる動作を極端に多く繰り返して、ケアしないとどうなるでしょうか?
膝周辺の筋肉が固くなっていきます。
膝が健康な状態では、膝周辺の筋肉が柔軟に伸びたり縮んだりできる状態でした。
ですが、さんさ踊りをして固くなった膝周辺の筋肉を放置したまま再びさんさ踊りを続けると、本来伸ばせるはずの筋肉が柔軟に伸ばせない状態になっています。
そして固くなった筋肉やその筋肉の付け根が、膝の曲げ伸ばし動作時に無理やり引き延ばされて損傷して、膝周辺に痛みを引き起こします。
そのままケア無しで踊り続けると、筋肉はさらに固くなっていき、膝周辺の痛みはさらに増していきます。
バレーボール、バスケットボール、サッカー選手に多い「ジャンパー膝」と似た症状です。(ジャンパー膝について詳しく知りたい方はググってみてください。)
トレーナー(理学療法士)にさんさ踊りの動きを見てもらった時のこと
私がお世話になっているトレーナー(理学療法士)に、さんさ踊りの動きを見てもらい膝痛の対処方法を相談した時のことをお話します。
(このトレーナーさんは医療関係者の間でも「かなり優秀」と言われている方で、私が抱えていた3つの身体故障を1年で回復に導いてくださった大恩人でもあります。)
私:
「最近踊る時間が増えて膝痛が再発してきまして・・。動きも含めて膝を診てもらえますか?」
トレーナー:
「ん~~、なるほど。膝を前に突き出して、左足を軸足にして、さらにひねる動作も多いです。ジャンプ、屈伸も多い。これだと膝は壊れやすいでしょうね。さんさ踊りを考えた人は、健康よりも美を追求したのでしょうね。」
私:
「踊り手寿命を長くするケアやトレーニング方法はありませんか?」
トレーナー:
「あります。まなぶさんの場合は、筋肉の固さが原因で痛みが起こっている可能性が高そうです。ですので、固さを取るケアと負荷に楽に耐えられるように筋力アップトレーニング、体幹トレーニングを継続すれば、踊り手の寿命を長くできる可能性が期待できます。」
私:
「膝痛についてはどこの筋肉をケアすれば良いですか?」
トレーナー:
「まなぶさんの今の症状と動作から判断すると、主に内側広筋だと思います。内側広筋の固さを取り、柔軟性を高めることで、まず膝の痛みは減っていく可能性があると思います。
その後は長い期間をかけて内側広筋のトレーニングですね。強い負荷に楽に耐えられる筋肉が多く付けば、筋肉への負担も減るし関節も守られやすくなると思います。」
内側広筋はどこか?
内側広筋とは大腿四頭筋群の一つで、内太ももから膝にかけての筋肉です。
踊り手で膝が痛い人は、試しに膝に近い内側広筋(膝に近い内もも)をグイグイ押してみてください。押して痛く感じる場合は、筋肉が固まり柔軟性が乏しくなってしまっているそうです。
私がトレーナーさんに診てもらった時に内側広筋を指で押したところ、「う~~~!」と声が出るほど苦しさを感じました。
さんさ踊りをケア無しで続けることで、内側広筋が固まる。その結果、膝の曲げ伸ばしの時にスムーズにこの筋肉が伸びず、筋肉の付け根から引っ張られたり組織が損傷する原因になります。
そう、まさにこれが私の膝痛の原因なのでしょう。右足の内側広筋を押してみても殆ど痛くない。左足だけが痛く感じるのです。
もし筋肉が固まっていない正常な状態で押すとどう感じるか?「特に何も感じない」か、「くすぐったく感じる」そうです。
試しに子供の内側広筋をグリグリ押してみたら「くすぐった~~い!(笑)やめて~~!」と言っていました。本来はこれが正常なのです。
ということは、私の場合は左足の内側広筋の固さが取れていけば、膝痛は改善していく可能性が高いということです。
内側広筋のケア方法
ここからは、私が教えてもらったさんさ踊りによる膝痛を改善するための内側広筋のケア方法です。
結果から先に書くと、これを継続的に行うことで膝痛は体感で8割程減少しました。ケアの方法を教えてもらい、実施し始めて約50日目にこのブログを書いています。昨日練習で太鼓で踊ってみた時には、膝の痛みはほとんどありませんでした。
週に2日練習をし、時々週末に20分程の派遣演舞を行いながらでも膝痛を改善できたので、結果にとても満足しています。
毎日行う内側広筋ケア
手軽なケア方法の1つは、↑の写真のようにつま先を外側に向けて足首を手で持って内側広筋を伸ばすストレッチです。これは練習前後、休憩中、職場、自宅どこでも気軽に出来ますね。
重要なのは1回30秒は継続して行う事。筋肉をしっかり伸ばそうと思うのであれば、約30秒は必要だそうです。
私のように既に結構痛む人にとっては、ストレッチだけで筋肉の固さを取るには足りませんでした。ですので、ストレッチポールを使った↑このケアも行っています。内側広筋にポールを押し転がし当てる方法です。
これがキツイ!私の場合は内側広筋がかなり固くなっていたらしく、初めて行った時は「ググ~~っ・・!」とうめき声が出っぱなしでした。
ですが、続けて10日、20日、30日と経過するうちに固さが取れてきて、ケア時の強烈な苦しさは感じなくなっていきました。手で押しても苦しくなくなりました。それに比例して、膝痛もどんどん軽減していきました。
「ストレッチポールは大きくて家に置けない」という人は、フォームローラーが良いと思います。
↑これがフォームローラー。小さく場所も取らないのでお勧め。試用してみたい場合は、盛岡体育館のトレーニングルームに2つ置いてあります。1回400円で入室できます。
この内側広筋の2つのケア方法は、今では毎日行っています。特に練習前後は入念に行うようにしています。入浴後は効果が高くなるそうです。
初めて行う場合は、弱めの負荷で様子を見ながら行う方が良いと思います。
内側広筋のトレーニング
次に内側広筋のトレーニングです。
トレーニング開始にあたって予め注意しておきたいことは、「最初はかなり弱い負荷から始める事」です。
筋肉が固くなり膝痛が起こっている状態でその周辺部分の筋トレを行うわけですから、最初から強い負荷で行うと組織が損傷して悪化する可能性が高まるからです。
弱い負荷でトレーニングを開始して、悪化しない負荷を見極め、膝痛の具合も見ながら少しずつ負荷を上げていくことが望ましいです。
また、さんさ踊りの練習前後にこの筋トレはお勧めしません。さんさ踊りで内側広筋の力を消耗するからです。私の経験ではさんさ踊り練習前後24時間以上空けて、さらにトレーニングのペース週2回で中2日空けて行うことで、悪化なく継続できています。
レッグエクステンションというトレーニングです。内側広筋を鍛えるコツは、つま先を外側に向けて行うこと。
つま先を内側に向けると外側広筋が鍛えられます。バランスを考えると両方行うことが望ましいです。
1セット12回前後で限界の重量で行い、計3セット。インターバルは1~2分で設定しています。
ただし上の画像は特殊な機械を使ったトレーニングです。一般的にレッグエクステンションのマシンというと、
↑これになります。ほとんどのジムに設置してあると思います。(盛岡体育館にもあります)
これもつま先を外側に向けて行うことで、内側広筋が鍛えられます。両足同時に行うのは難しいので、片方ずつが良いと思います。
その他膝のために気を付けること
練習し過ぎない
さんさ踊りをすればするほど、膝への負担が増すのはどうしても避けられません。ケア方法があるとはいえ、仮に週3~4日さんさ踊りの練習をした場合は確実にオーバーワークになり、ケアでの回復が追い付かなくなってしまいます。
練習時は派遣演舞の3倍ほどの時間踊りっぱなしになります。さんさ踊りを長く続ける事を視野に入れる年齢ステージに達した場合は、練習は週に2回が限度かと感じています。
練習時間を減らした分、体力作りや身体のケアに時間を充てることが踊り手寿命を長くできると思います。
体重の増加と食事コントロール
体重が増加する分、膝への負担は確実に増します。
それに耐えうる筋力があれば良いのですが、歳経るごとに筋力はどう頑張っても低下していきます。膝の健康を適度に保ち踊り手の寿命を長くしたい場合は、体重の増加には気を付けた方が良いと思います。
ですので、食事のコントロールが大切になります。基本的に脂質が多い食べ物は控え、その分たんぱく質食を摂るようにすることが良いでしょう。
さいごに
多くのさんさ踊り手が「膝痛は宿命」と感じているようで、回復させる為には「踊らないこと」「休むこと」だけが一般的な方法として取られてきていたと思います。
ですが、専門家のサポートのもと適切な情報と知識を得て実行することで、踊りを続けながらでも膝痛を改善させることが出来たのは、私の踊り手人生にとって大きな収穫になりました。
長く楽しく踊り続けるには、身体のケアが大事だと痛感しました。
今回のブログは、多くのさんさ踊り手や伝統芸能で膝を酷使する方に、私の体験を共有したいと思い書かせて頂きました。ご参考頂ければ幸いです。
さんさ好み まなぶ
謝辞
今回の膝痛改善やその他の故障改善を始め、様々な情報を提供してくださった「Conditioning Field BLUE8」様のスタッフと理学療法士:菊池 賢汰さんにこの場を借りて感謝の意を伝えたいと思います。
ありがとうございました!
【 Conditioning Field BLUE8(ブルーエイト) 】
住所:岩手県盛岡市開運橋通4-28 B1F 開成プラザマンション
公式サイト:https://blue8.jp/
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